November/'05

’05/11月

2005年11月20日

この所、映画や食べ物の話題ばかり書いていたせいか?「忙しい、忙しい」と言ったら「先生、我々よりずっと充実した余暇を過ごしていらっしゃるではないですか?」と言われてしまった。
うーむ、そうかもしれないと思いつつ、ちゃんと本業のピアノも頑張っているのです。
11月3日(文化の日)は、池袋のステップ審査で、朝9時から夜8時までホールに缶詰で、100名以上の講評書きをしていたし、クラコンに続き、2週続けてショパコン・イン・アジ、そして教育連盟に生徒を出しながら、夜は11時過ぎまで受験生の特訓である。
この所、かなり忙しくてストレスが溜まっているが、長年の経験上、あまり深く何事も悩まない、考えこまない様、訓練しながら、気分転換をうまくしているつもりなのだ。
A型で、神経質で、結構クヨクヨ考えて、落ち込むのだが、大変な事が津波の様に、次から次へと押し寄せくるせいか、一つの所に留まっていられないのが、不幸中の幸いである。
コンクールは11月いっぱい続き、12月は年末のグレンツェンやカワイ、クラコン全国大会と続き、お正月明けにはショパコンの全国大会、受験までとずっと休みなし。
ひっきりなしなのだから、笑って乗り切らなけれゃ、やってはいられない!
そこでまた食べ物の話で恐縮だが、最近の凝り性が見つけたのは、ドイツのグリューワイン(Gluh Wein
赤ワインにスパイスと砂糖を加えた、ほんのり甘いワインで、温めて飲むワインだ。
よくドイツのクリスマス・マーケットなどで、歩きながら飲んでいるワインがこのワインだそうで、ドイツの冬を味わえる気がするので、あやかって寝る前に、レンジでチンして、飲んで、ポワーンと酔い、暖かくて、幸せになって布団に入る。
こんな時、"私は幸せだ"とつくづく思いながら、忙しい中でささやかな毎日を過ごしているというわけだ。


2005年11月13日

映画ドア・イン・ザ・フロアを見た。
昔から映画鑑賞は趣味の一つだが、ビデオやDVDの普及で、本当に手軽にいつでもロードショーがお茶の間で見られる時代なのだが、やはり薄暗い、あの映画館にゆったり座って、大画面で味わう非日常の世界は、映画そのものに集中させてくれるので棄て難い。
だから、気になっている映画は、時間の許す限り出かけたいと思っている。
気持ち良い位、秋晴れの午前中、静岡にUターンする前、早起きして、いそいそと恵比寿のガーデン・プレイスに出かけていた。
恵比寿は久し振りだが、ここは本当に広々として気持ちがよい。
のんびりと、こんな所でお買物など、時間を気にせず、ぶらぶらと気の向くまま、出来たら、都会ライフ満喫なのだが………。
時間に追われ、間隙を縫って、遊ぶ身には見果てぬ夢である。
さて、ドア・イン・ザ・フロアである。
新聞を見て、見出し広告に魅せられたのだが、"熟年"と"深く横たわる夫婦の溝"なんて言葉に反応するのは、別に夫に不満があるわけではない。
今や2人でやりたい事をやっているから、お互い基地である家に戻った時は、いたわり合いの精神というか、同じ人生を生きてきたパートナー戦友同志という感じで、もうとうに男と女を越えた(悲しいかな)仲であるからだ。(汗)
映画の内容は、これは今後見る方々の為に、言わない方が良いだろう。
いわゆるミステリーではないのだが、これを最初に話してしまったら、この夫婦の間に横たわる深い溝と、本質的な男と女の違い、人間の悲しみを紐解いていく事にならないからである。
とにかく救いようのないテーマなのだ。
見終わって、後を引く、後を引く、数日もずっーと後を引いたから、多分、これは名作なのだ。
"四月の雪"の様な救いようの無さとは違う。
さすが原作(未亡人の一年)が、しっかりしているだけあると思った。
この理屈抜きの後味こそが、私に映画の良し悪しを決定付けているのだ。☆☆☆☆☆星5
この映画を観て感じた事だが、「人間には乗り越えられない悲しみも不幸もない。」と神様はおっしゃるが、それが出来る人、出来ない人の2つのタイプが、この世にはいるという事だ。
乗り越えようと努力しても乗り越えられない人間と、それを乗り越えようと努力している人間と、どっちが偉いか優れているか?
誰もが、それを乗り越えようとする者に軍配を上げるに決まっている?
いやそんな事を言い切る事は出来ないのだ。
それは当事者ではないからである。
いつまでも、悲しみを引きずっていては前に進めない。
それは自分の為にも、人の為にもならないと分かっていながらも、それが出来ない人間だってこの世にいるのだ。
繊細さは、罪だろうか?それは責められるべきものではない。
その2つのタイプが、男と女であったら、そして、それが夫婦だったら、どうなるのだろう?
同じ悲しみと苦しみを共有しながら、それと向き合ってしまう者と、そこから目をそらして、前向きに生きようとする者が、同じ屋根の下に暮らしていたら、2人の苛立ちは、同じ苦しみを共有する夫婦であるが故に、理解できないし、許せないだろう。
男と女というものは、所詮理解出来合えない生き物かもしれない。
私も、以前色んな事で悩んでいた時期に、夫に相談した事があるが、起きているうちは、深刻に考えてくれていると思ったが、ベッドに入った途端、大いびきだった。
私はまんじりとも眠れない夜を過ごしているというのに。
その感性が許せなくて、怒りを覚えた事があった。
どこのうちの夫もそうかというと、男と女が逆の事もあるかもしれないが、男と女、夫婦を越えて、タイプの違う人間同士が、本当に同じ感性で理解し合うというのは、難しい事なのだろう。
逆に同じタイプの人間同士で、くよくよ、くよくよ思い悩みあったら、これまた困りものだから、どちらが楽観的というのは、救いようがあるとはいうものの、悲観的な人には、その楽観的な逞しさが羨望であったり、苛々の原因になったり、悲しみが深い程、そして他人ではないという事で、更に許せないものだろう。
恋人も夫も友人も励まし、支えにはなれても、決して理解し合えないのでは?と、人間の孤が浮き彫りにされた映画の内容だった。
じゃあ、一体この映画の筋は、何なのと思われた方のために、映画の中で紹介される、ジェフ・ブリッジス演じる絵本作家テッドコールが、書いた作品から抜粋しよう。

トア・イン・ザ・.フ□ア
「床の上のドア」
テッド・コール著
自分が生まれたいのか分からない男の子と、生まれてほしいか分からないママ。
2人は湖に浮かぶ島の小屋に住んでいました。
辺りには誰もおらず、小屋の床には一つのドアがありました。
ドアの下にあるものを、男の子もママも恐れていました。
遠い昔、クリスマスに子供たちが遊びにきてドアをあけてしまい、下の穴へ消えてしまいました。
ママは子供たちを捜そうとしてドアを開けましたが、恐ろしい音がして髪が真っ白自になりました、幽霊のように。
ママは床下に恐ろしいものを見ました。
想像もつかないほど恐ろしいものです。
ママは男の子に生まれてほしいか悩みました。
床下にいるものを思うと迷います。
でも最後に思いました「いいわ。開けるなといえばいいんだもの」
でも男の子はまだ、床にドアのある世界に生まれたいのか分かりません。
でも森や島や湖には美しいものがありました。
「思い切って生まれてみよう」
男の子は生まれました。そして幸せでした。
ママもまた幸せになりました。
でも一日に最低一度は言いました。
「決して 決して 絶対に 絶対に 絶対に 床のドアを開けてはダメ」
でも彼はただの小さな男の子です。
男の子ならそんなドアを開けたくなりますよね?


間違って一緒になった、感性の違う人間同士の孤独というテーマと、同時にもうひとつのテーマが、あった。
それがドア・イン・ザ・フロアである。
人間は、誰もが床下の扉を持っている。それは運命、宿命の扉である。
誰もが、そのドアを閉めたままにしておきたいと思うけれど、人生では呼ばれたら、皆そこへ降りていかねばならないが、そのドアの存在を知っていたら、何もかもむなしくて、前に進めないだろう。
先を知りたくて、占いを見てもらう者もいるかもしれないが、しかしハッキリとした先の事は分からないし、分かっていないからこそ、今を精一杯生きていく事が出来ると思うし、今日のピアノの出来で、一喜一憂し、コンクールで泣いたり笑ったり出来るのだ!
男と女、人間の孤独もさる事ながら、その床下のドアを気にしながらでも、今を精一杯生きるしかないぞ!
まして、いつか開くその扉の前に立った時、強く乗り越えられる人間でありますようにと願わずにはいられなかった。


2005年11月06日

つくづく私は庶民だと自覚しているのだが。
時々、この庶民が反乱を起こす事がある。
友人から言わせると逆なんじゃないの?と言われるが本人はそのつもりはないし、自分で言っているから確かである。
この頃、秋になって主婦をしてエコ兼節約もしているうちに、すっかり嫌気がさし始め、反動で振り子が大きく贅沢モードに振れたがるのを感じる。
お料理の先生のパーティーでフランス料理を頂いた辺りから、スイッチが切り替わったのかもである。
ついこの間まで、というよりずっとイタリア料理が好きだった。(息子に最初に与えた離乳食は、スパゲッティだったくらいだ。)
フランス料理は味があまりはっきりしないから、庶民派の私としては、フランス料理よりイタメシ派だったが、このところワインにはまりだしたたら、イタメシより上品な味のフランス料理が気になりだす。
1年前韓国ドラマにはまった頃は、新宿大久保まで韓国の料理を食べに、足繁く通った私だが、今は自宅で味噌チゲを作る程度で、大久保で途中下車する事もなくなった。
最近は、ワインとチーズ、シャンパーニュである。
一時は、前世は韓国人かと思ったが、今やすっかり子供の頃からそうだと信じていたフランス中世のお姫様だったかもと思うようになっている。(思い込みは自由だから、この際、どうせなら豪快に行こう!)
お菓子は何といってもマカロンだ。このマカロンが大好きだ。
あのフワッとサクッとした小さいメレンゲ菓子にメロメロである。
マカロンは、あのカトリーヌ・ド・メディシスがフランスに嫁いだ時、伝えたと言うお菓子である。そして、かのンパドール夫人がのたまったという、「女が酔って美しくいられるのは、シャンパーニュだけ」というシャンパーニュとイベリコ豚のハムが食べたーい?と秋の空を仰いでいる。
だが、私には、ダイエットという自分自身に自ら課した掟がある。
しかし、メディチのカトリーヌポンバドール夫人のこの2人が、私の行く手の邪魔をするし、この2キログラム減とポッコリおなかをへこます為に、日夜努力をせねばならないのだ。
節約と贅沢とダイエットこの3つが共存する手だては、ひとつ。
節約とダイエットが結婚して、贅沢に消えてもらうのが1番なのだが…
この贅沢が、節約とダイエットの行き過ぎにより消える事が出来ないという、悪循環なのである。
私の胃袋は、"食欲の秋"を迎え、ハムレットの様に"食べるべきか我慢すべきかそれが問題だ"と行ったり、来たりにある。
先週は、ハムレットがふと足を止める。止めた所は、新宿のとあるワインバー。(ネットで見つけた)
そこで、私は日曜の夜のレッスンの後、シャンパーニュシャブリの白ワインブルゴーニュ産の赤ワインを優雅に飲んでいた。
連れは(?)なぁーんだと思われるかもしれないが、元生徒である。その生徒が、誕生日1日前だったので、誕生日の前夜祭という訳である。
生徒は、ワインが分からないので、私は優雅にさらに気取って、ソムリエに「飲めそうなものを適当に見繕って」などと指示を与える。
まあ気取って指示を与えてもいいくらいの余裕の年な訳だけど、実はワインバーなんぞ、生まれて初めてなんである。
しかし、そこはそれ、馬鹿にされないように、知ったかぶるのが得策である。
おのぼりさんとばれては、私に連れて来られた生徒も迷惑ではないか?
しかし、シャブリはおいしかった。シャンパーニュも辛口で最高。赤ワインは、渋みとタンニンが効いている。
ソムリエの選んだ生徒のを試しに飲んでみたら、こっちの方がずっと飲みやすかった。(ワイン初心者の私には、こっちの方が馴染む。)
私は余程、タンニンのきいた熟成した年齢だと思ったんだろうか、内心「チェッ」と舌打ちする。
ワインの専門店は、ソムリエが更にワインの出所を説明してくれて、お薦めを少しずつ出してくれるので、いろいろな味を安価(一応)で試す事ができる。
たまには夜遊びも良いではないか?
生徒の誕生日という事で、今日はハムレットもワインを頂くが、しかし翌日は何と悲劇の主人公は、ダイエットの王妃エリザベートの必死の制止をも振り切って、銀座のメゾンド・ショコラに出没。
ひとつ210円のマカロンを8つ購入していた。
私は、マカロンはピエール・エルメとこのメゾンド・ショコラが一押しと思っている。
まだあの幻のラデュレを試していないのだが。残念―――。
この直径約3cmのマカロン210円は、庶民には高価である。これも庶民の反乱か?(フランス革命である。)
その上、お昼にはフランス料理、タイユバンのランチも食べていた。それも白ワインと伴に。
しかし、タイユバンといっても、ランチ・メニューは2つ。サンドイッチである。「なーんだ、サンドイッチか!」と庶民は安心する。
カウンターバーに腰掛け、サンドイッチを手でつかみあっという間にペロッと完食。ふと回りを見てみると、皆がナイフとフォークで優雅に食事をなさっているではないか?
ランチ・メニューは2つで、そのどちらもサンドイッチではなかったっけ?とよくよく見ると、皆さんそのサンドイッチをナイフとフォークで優雅に上品に食べている。
それも全員である?
私は、もしかして田舎者?まさか?いまさら聞けない恥ずかしい事である。
首をかしげながら、手づかみ早食いを恥じながら店を出た。
大体、この早食いは職業病である。
超早いと思って、自負していた私だが、(暴露するが、読んでいたらごめん)M.Y.先生なんか私より超早い!飲み込んでいるんじゃないか?と思うくらいだった。
私よりずっと指導の実力が上だと思っているが、その食べっぷりの速さにさらに水をあけられた感じだ。
という訳で、すっかり今週はポンパドールとメディチ家のカトリーヌ姫胃袋を占領され、うなだれて新幹線に乗っていたのであります。
やっぱり時間に追われ、走っていた方が良いという訳である。
家に帰ったら、また体重計に飛び乗り、主婦をして真面目に暮らさなくてはと、ひたすらプチ・トリアノンを目指すのでありました。





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